化学療法室
今から約20年前,自分が医師になった平成元年には,外来化学療法という言葉は聞かれませんでした。 その頃の肺癌の化学療法(いわゆる抗癌剤による肺癌の治療)は,嘔吐・吐気や白血球減少などの副作用が強く, 化学療法は,原則として入院の上で行うことが当たり前であり, 患者さんが,食事が摂れない間は,補液による水分・電解質の補給を行ったり, 白血球減少に対しては,G-CSFと言う白血球を増加させる薬を注射して,感染予防に努めるなどの入院管理が必要でした。 また,治療効果も現在の化学療法に比べると,惨憺たるものであり, 数ヵ月の延命のために4~5ヶ月間も入院してつらい治療を受けていただくといった, まったく何のための治療なのかと疑問も抱くことも度々あったことを思い出します。
近年では,以前と比べると,副作用も少なく, ある程度の効果のある優れた薬剤や優れた制吐剤(吐気止めの薬)が開発され, 肺癌のみならず,多くの領域の癌において,外来通院にて化学療法を受けていただくことが可能となっています。 もちろん,現代の医学をもっても根治手術が不可能である癌の多くは,化学療法によって根治することは不可能であり, 副作用も皆無であるわけではありません。 ただ,10年前に比べれば,確実に化学療法によって長期に生存される患者さんが増加しており, 抗癌剤の副作用も外来通院にて制御可能なレベルまで発展してきていることは事実です。
浜松ろうさい病院では,癌を患われている多くの患者さんになるべく外来通院にて副作用の少ない化学療法を受けていただき, 健康な人とほとんどかわらない日常生活を長期間にわたって送っていただけるよう, 病状や副作用をチェックしたり, 抗癌剤点滴の管理を行う専任の看護師や適切に抗癌剤の調剤を行う専任の薬剤師を配置した化学療法室を設置して, 各診療科の癌化学療法の知識・経験を十分に備えた専門医が, 個々の患者さんの癌の種類や病状に合った化学療法を行っております。 癌のような病気に罹らないのにこしたことはありませんが, もし万が一,手術不可能な進行癌に罹ってしまった場合でも,決してあきらめずに, 前向きに治療を受けていただきいと考えております。
(化学療法安全管理委員長)
実際の患者さんの動き 1.インフォームドコンセントと説明、同意書にサイン 2.化学療法室の病床と日時の予約 3.治療当日は採血と担当科主治医の診察、点滴ルートを確保 4.化学療法室へ移動、専任看護師の確認と専任薬剤師の無菌調剤 5.担当科主治医あるいはがん治療専門医が見守る状況で投与を開始 6.投与中の経過はクリニカルパス、治療計画書と副作用チェックシート 7.次回受診予約の確認 8.医事課へ |
外来化学療法施行に関する施設基準 1.外来化学療法を実施するための専用の病床を有する治療室を保有している 2.化学療法の経験を有する専任の常勤看護師が当該治療室に勤務していること 3.当該化学療法につき専任の常勤薬剤師が勤務していること 4.急変時など当該患者が入院できる体制が確保されていること |
乳がん治療についての展示室設置のお知らせ
ブレストインプラントや人工乳房、乳頭、乳房再建用ブラジャー、医療用かつらを実際に触って見ていただける展示室を用意いたしました。
詳しくは以下のリンクをご参照ください。
※展示室について