独立行政法人 労働者健康安全機構 浜松労災病院

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泌尿器科詳細

泌尿器科ってどんな科?

A : 腎臓・尿管・膀胱・尿道などの尿の通り道と 精巣(睾丸)・前立腺などの男性生殖器を扱う科です。
(図の★印)

どんな病気をみるの?

A : 大きく分けて五つに分類されます。

1)尿路性器癌:
腎臓癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌など
2)尿路感染症:
腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、尿道炎など
3)尿路結石症:
腎臓結石、尿管結石、膀胱結石など
4)排尿障害:
前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿失禁など
5)男性性機能障害:
男性不妊症、勃起障害(ED)、男性更年期症など

どんな症状がでるの?

A : 代表的な症状と病気を示します。

1)尿がでにくい(排尿困難)
前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿道狭窄など
2)尿の回数が近い(頻尿)
前立腺肥大症、神経因性膀胱、膀胱炎など
3)排尿のとき痛い(排尿時痛)
膀胱炎、前立腺炎、尿道炎など
4)赤い尿がでる(血尿)
膀胱炎、尿路結石症、膀胱癌、前立腺癌など
5)尿がもれる(尿失禁)
切迫性尿失禁(前立腺肥大症や神経因性膀胱)、腹圧性尿失禁など
6)腰が痛い
尿管結石、腎盂腎炎、腎臓癌など
7)睾丸が腫れてきた
陰のう水腫、精巣上体炎、精巣癌など
8)勃起ができない、不十分(勃起不全)

浜松ろうさい病院泌尿器科の治療の特徴は?

A : 当科では、最先端の低侵襲治療に積極的に取り組んでいます。
【副腎腫瘍・腎臓癌・尿管癌、膀胱癌、前立腺癌】
 (腹腔鏡手術、経尿道的レーザー手術など)

日本泌尿器科腹腔鏡技術認定医2名により、
9割以上の患者さまに腹腔鏡で摘出術または部分切除術などを行っています。

腹腔鏡手術のメリットは?

A :
小さな傷
術後の疼痛が少なく回復が早いです。
通常手術翌日に歩行、食事可能です。
拡大視野
モニターに拡大して写すため、細い血管や薄い膜構造を認識できます。 そのため、細かな止血が可能であったり、他臓器を損傷するリスクが抑えられたり、 癌を確実に切除したりすることが可能です。
明るい視野
泌尿器科の扱う臓器は通常からだの深い場所に存在します。 開腹手術の際、腎臓の場合は肋骨、前立腺と膀胱の場合は骨盤の骨が邪魔になりライトの光が届きにくいため、 術野が暗くなります。内視鏡は先端が光るので、臓器の場所に関係なく明るい術野が得られます。

主な疾患の治療方針は?

A : 当科ではガイドラインや論文等にて確実に効果があると証明されている 治療法のみを行っております(エビデンスに基づいた治療)。
設備、手技などの問題にて当科で困難と判断した場合は速やかに 他院を紹介させていただきます。以下に主な疾患の治療方針をお示しします。

【腎癌】

  • ◆有効な薬は少なく、手術が治療の中心です。
  • ◆癌の状態(ステージ)、患者様の状態(年齢、基礎疾患など)を考慮しながら、癌の根治性は損なわず、 可能な限り腎機能を温存する手術(腹腔鏡下腎部分切除術)を積極的に行っております。

最近5種類以上の分子標的薬が保険適応となっており、転移のある方の予後も徐々に改善してきています。

【前立腺癌】

患者さまの年齢・基礎疾患・がんの悪性度・ご希望などに応じて無治療経過観察・ホルモン治療・放射線治療・手術療法(内視鏡治療)を相談し、決めています。

治療法 主な特徴と適応 主な副作用
手術療法
(前立腺
全摘除術)
・早期であれば、根治の可能性が最も高い
・他の治療に比べ、身体的な負担が大きい
・根治しなかった場合に追加で放射線治療が可能
(再度根治を狙える)
・尿漏れ(一時的)
・勃起障害 など
放射線療法
(外照射法)
・身体的な負担が少なく、外来で治療できる
・年齢を問わず治療が行える
・根治しなかった場合には内分泌療法
 (手術は不可)
・排尿痛、排便困難
・下痢、下血、痔
・勃起障害 など
内分泌療法 ・前立腺がんの進行を抑える治療法
・進行期・あるいは高齢の患者さまが中心
・手術や放射線療法と併用できる
・性機能障害
・骨粗しょう症
・メタボリック
 シンドロームなど

【前立腺癌の手術療法】

前立腺と精嚢を摘出し、膀胱と尿道を縫合する手術

当院は2013年3月に腹腔鏡下前立腺全摘除術の施設基準を満たし認定施設となりました。(2013.7月時点では浜松市内では当院のみ)

【膀胱癌】

  • ◆癌の浸潤する深さにより大きく治療が異なります。
  • ◆浸潤が粘膜までの癌を表在癌(ひょうざいがん)といい、全体の80%を占めます。
  • ◆浸潤が筋肉以上に達する癌を、浸潤癌(しんじゅんがん)といい、全体の20%です。

【表在性膀胱癌の治療】

  • ・尿道より内視鏡を挿入し削り取ります。

  • ・再発率が60-80%と高いので、再発予防目的に抗癌剤やBCGを膀胱内に注入することがあります。

  • ・5-10%の方が再発を繰り返すうちに浸潤癌となってしまいます。

【浸潤性膀胱癌の治療】

  • ・開腹手術もしくは腹腔鏡にて膀胱を切除し尿路変更術を行います。

  • ・術前または術後に抗癌剤の治療を行うこともあります。

【当科で行っている尿路変更の種類①~③】

尿路変更それぞれの特徴

【前立腺肥大症】

 内服治療で十分な効果の得られない方・重度の方・薬を飲みたくない方などに 内視鏡レーザー手術(HoLEP)を行っています。
 1998年に開発された術式で、世界中で行われています。 尿道から内視鏡を挿入し前立腺をくりぬき膀胱内で砕いて取り出します。 レーザーを用いるため出血が少なく安全で、 長期的に前立腺肥大症の再発もない画期的な手術です。

腰椎(半身)麻酔または全身麻酔で行います。
術後の痛みもほとんどなく、通常術後2-3日で退院していただけます。
当科では2006年2月より導入し、2013年4月までに300名以上の患者さまに行い、 良好な成績が得られています。

【尿路結石症】

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
ドルニエ社製(リソトリプターδ)の機種を導入し通常日帰り(外来)で行っています。
約9割の砕石率で、非常に良好な成績が得られています。

患者さまにはベッドに約40分間寝ていただくだけで、強い痛みはありません。
体外衝撃波で治療が困難な場合(約10%)は、尿道からの内視鏡手術へ変更します。

経尿道的尿管砕石術(TUL)
ESWLでは困難な結石、早急に結石を除去したい方、感染を合併しているなどに行います。 割るだけではなく取り出すことが可能ですので確実な方法です。 軟性尿管鏡(f-TUL)を用いる場合は腎結石の治療も可能です。 通常5-7日の入院と腰椎麻酔または全身麻酔が必要です。

【腹圧性尿失禁】

 女性は、加齢や出産(分娩)などにより骨盤の底の筋肉(骨盤底筋)が弱ってくる場合があります。
 すると、おなかに力がはいるとき(咳、くしゃみ、笑った時、重いものを持ち上げたときなど)に膀胱・尿道が下へずれてしまい、 尿失禁がおこるようになります。
 まずは骨盤底筋体操や薬による治療を試みますが、 改善が得られない場合は尿道を支えるための特殊なテープを挿入する手術(TVT手術またはTOT手術)を行います。
 3箇所の小さな傷のみで施行可能で、手術時間は通常30分から1時間程度です。

 術後の痛みもほとんどなく、通常術後3-7日で退院していただけます。