独立行政法人 労働者健康安全機構 浜松労災病院

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乳腺外科詳細

<乳腺外科の特色>

 平成22年4月に当科は新設されました。 医師(外科・麻酔科・放射線科・病理・婦人科・形成外科など)、 看護師(外来・病棟・化学療法室など)、薬剤師、技師(放射線科・検査科・病理部など)、 検診部と連携し、主として乳がんの早期発見・診断・集学的治療を行うチーム医療を目指しています。

全般

 乳腺を重要なホルモン反応性内分泌臓器としての観点から乳腺を診療の対象としています。 思春期~妊娠期・授乳期~閉経期以降までの女性の一生の時間経過での 女性ホルモンの変動と密接に関係した乳腺に起こる疾患を扱っています。 また男性にも乳腺組織・女性ホルモンが存在するため、 女性と同じく思春期~高齢までの男性乳腺疾患も扱っています。

プライバシーの配慮

 主として女性が来院しますので可能な限りプライバシーに配慮しカーテンでの仕切りなどを含めた診察室の工夫(図①②) や診察の仕方・説明の仕方に留意しています。 また、放射線科でのマンモグラフィー撮影は女性放射線技師がデジタル・マンモグラフィー撮影装置(図③) を使用し行います。また生理検査室での乳房超音波検査も女性生理検査技師が担当します。

■乳がん治療

①石灰化部位の組織採取にステレオガイド下マンモトームおよび腫瘤陰影に超音波ガイド下マンモトームを施行し、 安全に確実な組織生検術を行っています。
②術前・術後療法に化学療法・ホルモン療法・放射線治療を行っています。
③手術療法は乳房温存療法を主に行っております。 欠損部位が大きい場合には遊離真皮脂肪移植術を同時再建として行っています。 またセンチネルリンパ節生検術を併施しており腋窩リンパ節廓清術を可能な限り縮小しています。
④再発乳がんの治療・緩和療法も行っております。 随時セカンドオピニオンを受け付けておりますので、これまでの治療歴が分かる紹介状・画像フィルム等をお持ちいただければ、 可能な限り対応させていただきます。

図① 診察室1
図② 診察室2

図③ デジタル・マンモグラフィー撮影装置

乳がん検診

 最近の統計では日本女性の16人に1人の割合で乳がんに罹患することになり女性のがんの罹患率第1位です。 浜松市の乳がん検診の指定病院のひとつですので、乳がん検診として来院していただけます。 電話で予約をしていただくことができ、 検診当日にマンモグラフィー・視触診の結果をレントゲン・フィルムの現像を待つことなくフィルムレス・モニター (図④)でマンモグラフィーをお見せしながら、その場で検診結果を説明します。


図④ フィルムレス・マンモグラフィー読影モニター

ピンクリボン運動

 当院はピンクリボン運動に参加しており、 キャンペーン時期には日曜検診等もありますので、 詳しくは当院の検診係までお問い合わせください。

<対象疾患>

 乳腺に関わるすべての疾患を診療対象としています:思春期早発に伴う小児の乳腺腫脹、 思春期に好発する乳腺線維腺腫を含む良性乳腺腫瘍、妊娠期および授乳期に起こりやすい乳汁うっ滞を含む乳腺炎、 30歳代後半から更年期にかけての乳腺症、男性の女性化乳房症など

<乳がん>

診断

 当科では初診の際、マンモグラフィーおよび乳腺超音波検査を当日行います。 乳がんが疑われた場合には当日あるいは可能な限り早期に吸引細胞診および 針生検を行い乳がん確定診断までの時期を可能な限り短縮する努力をしています。

治療

 乳がん治療は手術療法・放射線療法・内分泌ホルモン療法・化学療法の集学的治療を必要とします。 当院では乳がんに関係するほとんどすべての治療を受けていただくことが可能です。 特に化学療法に関しては安全で効果の高い治療を受けていただけるよう考えております。 術後の化学療法は最終病理診断結果を踏まえて行いますが、当科では術前化学療法を積極的に取り入れています。 針生検の病理診断結果によって薬剤選択を行い、乳房温存率の向上や術前の化学療法に対する反応性を調べることで、 術後の治癒率の向上に力を入れています。化学療法は各個人に適した方法で安全かつ確実に行います。 初回導入は入院で行いますが、 一部の化学療法を除いてほとんどの化学療法では2回目以降は外来化学療法室での施行が可能です。 したがって通院加療が可能で、 治療を受けながら生活の質(QOL)を出来るだけ損なうことなく家庭生活および仕事の継続が可能です。

センチネルリンパ節生検

 歴史上、乳がんの外科手術ではこれまで腋窩リンパ節郭清術を画一的に行ってきましたが、 そのため術後の患側上肢のリンパ浮腫で辛い思いを余議なくされてきました。 現在では、乳がんが最初に転移すると言われているセンチネルリンパ節(見張りのリンパ節)に転移が認められなければ、 それ以上深部のリンパ節には転移していない可能性が極めて高いという理論のもと、 可能な限り腋窩リンパ節郭清術を省略し、術後のリンパ浮腫の発生を減少させることに努力しています。 このセンチネルリンパ節生検を当科は導入し、手術中に生検リンパ節への乳がん転移を病理医が判定し、 転移が認められなければ腋窩リンパ節郭清を省略する方法を行っています。

手術方法

 良性腫瘍を含め、手術では可能な限り整容性を大切にしています。 これまでの乳房全摘術に代わり乳腺腫瘍摘出術・乳房部分切除術などの乳房温存率の向上を目指している他、 創を目立たなくするための努力をしています。 傷を小さく切開するのことはもとより、切開する部位にも熟慮し乳輪切開法・腋窩切開法・ アンダーバスト切開法など腫瘍の位置・大きさにより患者様と相談して手術方法を決定します。 また吸収糸を用いた縫合を行っていますので抜糸は不要で術後早期からの入浴・洗髪が可能です。

再発乳がんの治療・緩和療法も行っております。

 随時セカンド・オピニオンを受け付けておりますので、これまでの治療歴が分かる紹介状・画像フィルム等をお持ちいただければ、可能な限り対処します。

<臨床試験への参加>

 臨床試験とは、開発中の新薬の効果及び既存の薬剤と各種治療方法との有効性と安全性などを確認するため、 患者様にご協力いただき、実際に薬を服用していただく試験になります。
 新しい治療法の研究または開発には欠かせないことから、当科でも臨床試験に参加し、 乳がん治療の進歩に貢献できるよう努めております。
 現在参加している臨床試験は、次のとおりです。

 厚生労働省東海北陸厚生局 先進医療受理番号(先-194)第3号
  「エストロゲン受容体陽性HER2陰性乳癌に対するS-1術後療法ランダム化比較
  第Ⅲ相試験(試験の概要についてはコチラ)」