独立行政法人 労働者健康安全機構 浜松労災病院

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足のお話~外反母趾~

整形外科副部長 濱本 洋輔

 ※平成30年11月ろうさいニュースより一部抜粋

 平素より病診連携にご理解いただきありがとうございます。
 この度ろうさいニュース整形外科のお話は身近なお話、外反母趾です。(図1)
 国民病ともいわれる外反母趾ですが、その9割が女性です。 原因は解剖学的な母趾内転筋の硬さによるものや、骨格、ハイヒールなどがあげられます。 また、母趾・第2足趾の長さの問題というよりも後脛骨筋の筋力の低下による偏平足・開張足が問題となることもあります。 一般的に簡便には第1中足骨と母趾基節骨のなす角(HV角)が15度までを正常とし、15度~30度を軽度、40度以上を重度外反母趾としております。 (図2)疼痛を訴える場合、見た目が気になる場合や合う靴がなくなってきた場合などは治療の対象になります。 外反母趾によりMTP関節が内反しバニオン(腱膜瘤)が形成される、 足底にかかる荷重の中心が偏りにより胼胝(いわゆるタコ)が形成されることにより(図3)痛みを感じます。 変形が強くても歩行時の疼痛が弱く治療に抵抗されておられるうちに重度化していってしまうのも現状です。

 外反母趾の軽度の場合はアーチサポート(図4)や中足骨パッド(図5)といった装具やストレッチングといった保存加療が第1選択となります。 改善が乏しい場合や重度の場合は手術療法となります。

 手術方法は実際には100種類程度の方法がありますが、重症度に合わせて骨切り部位を遠位、骨幹部、近位と分けて矯正骨切り術を行います。 当院で行っている術式を紹介いたします。 まず母趾変形が徒手的に矯正可能であり患者が2か月程度のギブス歩行に理解が得られる場合は第1中足骨遠位直線状骨切り術(DLMO法;図6)が適応となります。 これは外反母趾で出っ張った部分(第1中足骨頭)のすぐ下で骨切りし、第2趾のほうに押し込みます。 押し込んだ中足骨頭がもとの位置に戻ってこないよう、ブロックするためのピンを1本刺しておきます。 骨癒合がある程度得られたところで、そのピンは外来で抜いてしまいます。

 次に外反変形が強い場合には中足骨水平骨切り術(Scarf法;図7)を行っております。 これは中足骨骨幹部を側方からみてZ状に骨切りし、中足骨頭を含む掌側骨片を外側に平行移動し螺子固定します。 固定に螺子を用いることでより強固な固定と内・外反及び短縮・延長が自在に行えます。 骨切り部の接触面積も大きく骨癒合しやすいため、比較的早期の荷重歩行が可能です。但しこの方法では母趾の回旋変形矯正が不十分となります。

 外反変形及び回旋変形が強い症例には第1中足骨基部で外反骨切りを行うMann変法(図8)を行っております。 これは最もスタンダードな手術法です。第1中足骨近位を扇状に骨切りしそれを遠位骨を外反矯正しminiPlateにて固定、 さらに第1、第2足趾間に皮切をおき内転筋腱を母趾基節骨から切離し第1中足骨頚部に再縫着する方法です。 これは強力な矯正力があります。また、重度外反母趾にて第2,3足趾の脱臼も認める場合は中足骨短縮骨切り術も追加します。

 ひとえに外反母趾手術といっても重症度、回旋具合や母指内転筋の拘縮具合や第2,3足趾の変形も考慮にいれ術式を決定しなくてはいけません。 当院でも積極的に外反母趾治療を行っておりますので、 先生方の患者さんで、外反母趾でお困りの方がいらっしゃいましたら保存治療の指導も含めてご相談いただければ幸いです。 今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。