心臓病の話『狭心症・心筋梗塞について』
- ●はじめに
- ●急性心筋梗塞・狭心症について
- ●急性心筋梗塞・狭心症の症状
- ●急性心筋梗塞・狭心症の診断・治療
- ●予防対策
(4)狭心症、急性心筋梗塞の診断、治療
狭心症の場合、発作のない時の心電図は通常正常です。健康診断で心電図が正常だといわれても安心はできません。
狭心症発作の症状があるかどうかがまず大切です。心配な症状がある時は受診して下さい。
受診されるとまず問診をします(図4)。胸部のどのあたりに痛みがあるのか、どんなことをした時に痛みがあるのか、
痛みはどれくらい続くのか、階段を昇ったり、走ったり時に発作はおきないかどうか、
親兄弟に高血圧症や心臓病、糖尿病、高脂血症がないかどうか、タバコ、酒はどの程度飲んでいるのか、
ニトログリセリンを持っている場合はニトログリセリンが効いたかどうか等たずねます。
問診により症状から狭心症が疑われるかどうか、狭心症のリスクファクターがあるかどうか知るわけです。
次に診察に移るわけですが、聴診器で狭心症の診断ができるわけではありません。
聴診器では心不全等の合併症がないかどうか、弁膜症等の他の心臓病ではないかどうかを知るわけです。
その後心電図、胸部レントゲン検査をします。胸部レントゲン検査をすることにより心臓の大きさ、心不全の有無等がわかります。
心電図は先ほど述べたように発作のない時は普通正常です。しかし発作の時には心電図変化が現れます。
したがって狭心症発作をいかにしてとらえるかが大切になります。
ホルター心電図はカセットテープを使用して心電図を24時間記録する検査です。
自然に起こる狭心症発作をとらえることができます。運動負荷試験は運動中の心電図を記録する検査法です。
運動をすることにより心臓に負担をかけて、その時の症状や心電図で狭心症の診断をします。
心エコー図は超音波を心臓の上から当てて、心臓の働きを知ることができます。
心臓が弱っていないかどうか、心筋梗塞になっていないかどうか詳細にわかります。
以上の検査で狭心症が強く疑われる時には冠動脈造影検査が必要になります。
冠動脈造影検査とは足の付け根からカテーテルという細い管を大動脈の根元にある冠動脈にもってゆき
そこから造影剤を注入することにより冠動脈に動脈硬化があるかどうか知ることができます(図5)。
冠動脈造影検査の結果によって治療方針が決まります。お薬のみでいくのか、
冠動脈の狭いところを風船で治療する冠動脈形成術を行うのか、冠動脈バイパス手術を行うのか決定されます(図6)。
急性心筋梗塞は激烈な胸部症状とともに突然始まるわけですが、
狭心症の特効薬であるニトログリセリンをなめても効きません。3錠までなめても効かないときは心筋梗塞が疑われます。
病院受診が必要です。早い診断、治療が生死を決するといっても過言ではありません。
周囲の人に助けを頼み、救急車を呼んで心臓専門病院を受診して下さい。
急性心筋梗塞の診断に心電図は大変強力な武器となります。
心電図、心エコー図等で急性心筋梗塞と診断されたら直ちに治療に移ります。
先ほど述べたように心筋梗塞は冠動脈が突然詰まる病気ですので、
治療はできるだけ早く詰まった血管の流れを取り戻す冠動脈再開通療法に力を注ぐことになります。
血栓溶解剤を詰まった冠動脈に注入して再開通させる冠動脈血栓溶解療法、
詰まった血管を風船のついた管で拡げる冠動脈形成術などがあります。
再開通療法は90%以上の人に成功します。急性心筋梗塞発症早期は不整脈が起こりやすかったり、
心不全になりやすいので2ー3日集中治療室(CCU)で心電図や心臓機能の厳重な監視を受けることになります。
その後心臓の回復にあわせ運動を増やすリハビリテーションプログラムを受けることになります。
許される運動量は冠動脈病変の程度、心臓の機能によって決まります。
職場復帰は2-3ヶ月かけて医師と相談しつつ行うことになります。
心筋梗塞の再発作は1年以内に一番多く見られます。再発作は初回発作より重症となることもあります。
再発作予防のお薬をのみ、食事、運動、睡眠等生活全般にわたり注意しなければなりません。