ご挨拶
中央臨床工学部は、診療科が信頼して治療に専念できる専門知識を有するコメディカルスタッフ(Specialist)を目標に、最新の知見をもとに常にアップデートを重ね、業務を遂行しております。
そのため、固定チーム制でのスタッフ教育を主としていますが、幅広い知識も必要と考え、専門領域だけでなく他業務範囲も従事させ、経験年数を積むことでジェネラリスト(Generalist)としても活躍できるように努めています。
業務内容
臨床工学部はスタッフ6名(常勤:5名、嘱託:1名)です。
業務は大きくわけて、医療機器管理業務と診療支援業務があり、診療支援業務ではチーム医療の一員として、医師、看護師、臨床検査技師、放射線技師など他職種と連携し、手術室、集中治療室、透析室、血管撮影室等で業務を行っています。
またアカデミックな部署であるためには、日々の研鑽が重要であり、関連学会への演題報告やセミナー等へ参加に加え診療科との合同カンファレンスに積極的に参加し情報収集と新しい技術への対応に努めています。
MEセンターの1日
8:15
手術室の使用前点検
MEセンター担当者の最初の仕事は、手術室内の麻酔器や設備の使用前点検から始まります。
特に各部屋の麻酔器の点検は重要で、麻酔医と情報共有しながら、システムテスト、校正、リークテスト等を実施し、安全確認を行います。
また、手術室予定で使用機器についてもチェックリストに基づき点検を実施します。
術中の不具合などに対して迅速に対応できるよう体制を整えています。
10:00
返却時点検、貸出、返却管理
回収した機器の終業点検整備を開始します。
1日に60~80台の機器が入れ替わりますので、次から次へ機器の保守を行っていきます。
週明けは、返却棚に収まり切れない数の機器が返却されてきますので、ひたすら清拭、点検、履歴管理に追われます。
11:00
MEセンター専用PHSに中央材料室からコールが入りました。
Aさん「洗浄上がったので手術器具(ラパロ鉗子)の点検お願いします」。
B技士「点検行うので向かいます。」
鉗子の種類ごとに点検方法が異なりますので丁寧に確認しながら、専用の点検工具にて基準から外れないよう、把持力テスト、被膜剥がれ、導通テストなどを丁寧に行っていきます。
点検後は、折れや癖がつかないように専用ケースにまとめ、滅菌を行い次の手術に備えます。
内視鏡鉗子の点検
12:00
昼食
13:00
定期点検
午後は、毎月約80台の定期点検が計画されているので、対象機器の定期点検を行います。
今回は電気メスの定期点検を行っています。
専用のテスターを用いて、規定値の出力が出ている、対極板の機能やもれ電流のテストなどを実施していきます。
15:00
人工呼吸器の使用中ラウンド点検
呼吸器が正常に作動していることや、患者さんが苦しがっていないか、設定確認や同調性のラウンド点検に回ります。
これらの点検内容や伝達が必要な内容を電子カルテへ入力をします。
時系列に情報更新されていくので、稼働状況や経過が多職種間で情報が共有できるようになっています。
この日は、ラウンド点検中に、看護師さんから痰が固くなってきていると連絡があり、人工鼻から加温加湿回路の変更を行いました。
ラウンド中に呼吸器操作やモードなどの相談うけることもよくあります。
17:00
すべての点検件数や実施内容を、保守台帳等へデータ入力を行い一日が終わります。
なお、夜間帯でも医療機器の安全な運用ができるように、24時間365日対応できるオンコール体制を構築しております。
手術室の一日
本日は2名の技士で大動脈弁置換術の人工心肺を担当します
8:15
入室から始業点検
電子カルテにて最新の検査データを確認して手術室へ向かいます。
最初に装置の始業点検を実施します。
すべてのポンプの動作確認やポンプの向き、周辺装置の設定をすべて確認し問題ないことの確認を行います。
次に、人工心肺に用いる薬剤の準備や、心臓が停止している間に灌流する保護液(心筋保護液)の調剤を行います。
調剤時には、ダブルチェックによる確認と、血液ガス検査装置にて、組成濃度のチェックを行い、間違いがないことを確認して安全性を担保しております。
9:00
回路の組み立てと準備
患者さん入室後、人工心肺回路の組み立てを行います。
メインの回路担当者と心筋保護を担当する技士に分かれて準備を行います。
安全装置の装着も確実に行います。
その他、モニタリング機器やエコー装置、麻酔医の介助なども手術チームの一員として積極的に行い手術時間の短縮に努めています。
回路の充填
心筋保護回路の組み立て
SGカテの介助
10:00
手術開始
医師、麻酔医、看護師など、すべてのスタッフにてブリーフィングから始まります。
手術部位や薬剤、材料の準備など確認を行い執刀開始です。
開胸後、術者が心臓に人工心肺をつなぐチューブ(カニューレ)を挿入し、装置と接続していきます。
術者から「ポンプスタート」の掛け声にて、慎重に計器類を確認しながらゆっくりポンプの回転数を増加していきます。
飛行機の離陸のように患者さんの心臓を驚かせないように、人工心肺側に移行していきます。
血液ガスデータ、圧力計、回転数などの計器類(モニタ)を注視して送血量を増加させて予定した流量で安定させたら、心臓を止めて手術が始まります。
心臓への送脱血管の挿入
人工心肺の操作
心筋保護液注入操作
心臓停止後は、すべて人工心肺で循環と呼吸を維持することになるため、術野の進行に合わせ連携して手術を妨げないように操作します。 血圧や尿量、体温などは麻酔医の指示に従い調節し全身の十分な酸素や血液が循環されるように管理を行います。
吻合後、体外循環から離脱を始めていきますが、今後は飛行機の着陸のように、なだらかに心臓に移行していき負担がかからないように担当者の操作が重要になります。
モニタ機器や麻酔医と連携して徐々に心臓に血液を戻しつつ、ポンプの流量をさげていき、停止までもっていきます。
しかしまだまだ、終わりではなく、循環動態を注意深く観察しながら、血液の濃縮や機器の操作の補助にも関わります。
14:00
手術終了からICU帰室
手術終了後は、循環を維持するために複数のシリンジポンプ、モニタ、ドレーンなど多数の医療機器の医療機器が装着されているので、ICUまで医師とともに、患者さんを搬送します。
ICU帰室後は、ICUスタッフや医師とともにモニタ機器や呼吸器のセットアップと機器の作動状況確認し安全確認を行います。
15:00
体外循環実施記録の作成と振り返り
手術の流れに合わせた体外循環操作実施記録を作成し、webコミュニケーションツールにて医師、手術室スタッフと振り返りを行なわれます。
我々もより良いチーム医療ができるように積極的にディスカッションを行い、次の手術のプランにも反映し改善に努めています。
17:00
緊急手術に備え、装置の終業点検と材料の準備を行い一日がおわります。
魅力を教えてください
当院は前述のような業務を経験年数に関わらず、ローテーションで行うことで、様々な経験を積むことができます。
部内はもちろん、他部署との交流も多いです。
部署の人数は少ないですが、休みは希望通りに取れるため、スタッフはメリハリをつけて働いています。